最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
翌朝、俺は会社へ行く前に恭子さんの病院へ寄った。今日はまだ金曜日。休みだったら良かったし、今日はクライアントとの大事な打ち合わせがあって会社を休めない。
看護師さんに聞けば、恭子さんは個室の病棟に移っているという。その病棟へ行ってドアをノックしたら、恭子さんのお母さんが出て来た。昨夜はここに泊まられたのかもしれない。
「おはようございます。あの、恭子さんは……?」
「意識は戻ったし、だいぶ落ち着いてますよ」
「そうですか。よかった……」
まずはそれを聞いて俺は胸を撫で下ろした。ところが、
「中に入っていいですか?」
と聞いたら、お母さんは顔を曇らせ、
「それが……」
と言った。
「え?」
「まだ、ちょっと……」
お母さんは申し訳なさそうにしながらも、俺にまだ会えない事を告げた。治療中なのだろうか。あるいは女性特有の何かの事情だろうか。
いずれにしても今のところは諦めるしかない。一目だけでも恭子さんに会いたかったのになあ。