最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「俺なんかが噂になってるんですか?」
どうでもいいが、聞いてみた。
「なってる、なってる。女子の間じゃ、川田君の噂が一番多いんじゃないかしら……」
「そんな、大袈裟な……」
「ほんとだって。そう言えば、つい最近もある女子を振ったんだって? 確か総務の子だったかなあ」
「げっ。そんな事まで噂になってるんですか?」
確かにそんな事があった。口も聞いた事がないような子から、いきなり『付き合ってください』なんて言われ、もちろん俺は莉那先輩一筋だから速攻で断ったんだ。
「あなた、“僕には好きな人がいるから”って言ったんだってね?」
ん?
ああ、確かにそう言ったな。事実だし、それを言えば相手も納得すると思ったからだ。
あっ。これは絶好の流れかも。つまり、莉那先輩に告るチャンスじゃないか?
俺はほろ酔い気分で気持ちが大きくなっている事もあり、この流れで莉那先輩に告ろうと思った。
「実はそうなんです。僕が好きな人は……」
「ちょっと待って! ストーップ!」
“楠さんです”と言おうとした瞬間、当の莉那先輩に止められてしまった。