最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜

俺は恭子さんを説得するつもりだ。手術を受けるように。何がなんでも……


「つまり、手術を受けてください。俺のために。ああ、違う。何言ってんだろう、俺は……。ご両親のために。そして恭子さん自身のために。お願いします」


そう言って俺は恭子さんの返事を待った。「うん」と言ってくれる事を信じて。ところが……


恭子さんは小さく頭を横に振った。


「どうしてですか? どうして生きようとしないんですか? どうして……」

「違うの!」

「えっ?」

「親のためとか、私のためとかじゃなくて、あなたのために生きたいの。今、そう思ったの。両親には内緒だけど」

「じゃあ、手術を受けてくれるんですね?」

「うん。もし成功したら、ずっと傍にいてくれる? 友達で構わないから……」

「何を言ってるんですか? 友達じゃなくて夫婦でしょ? 俺は恭子さんにプロポーズしたんですよ? 忘れましたか?」

「もちろん憶えてるけど、もう無効だと思ってた」

「まだ有効ですよ」


俺は嬉しくて、恭子さんをギューッと抱き締めた。


それにしても恭子さん、何か変な事を言ったような気がするなあ……

恭子さんが言った言葉のどこかに、俺は何か引っ掛かるものを感じたが、それがどの言葉なのか、そしてそれが何を意味するのか、その時の俺はまったく気付かなかった。

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