最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「そうですね。きっと出来ますよ。恭子さんなら」
正直に言えば、それはどうかなと内心では思った。手術が終わって心臓の調子が良くなっても、それは一時的な事で、運動などの心臓に負担が掛かる事はその後も出来ないわけで……
でも、恭子さん自身がポジティブになる事はすごくいい事だと思う。やはり明るい恭子さんが俺は好きだ。
「ありがとう、川田君……」
「どういたしまして。でも、その“川田君”というのはやめてほしいな」
「え?」
「恭子さん、家では俺のこと名前で呼んでくれてるそうじゃないですか?」
「どうしてそれを?」
「お母さんから聞きました」
「ああ……」
「これからは名前で呼んでください。俺なんか最初からそうしてますからね。不公平だと思いませんか?」
「わかったわよ……」
「じゃあ、さっそく、どうぞ」
「えーっと……よ、陽平君」
「はい、恭子さん」
照れて頬を赤く染めた恭子さんが可愛くて、俺たちはしばし見つめ合った。
ふと、お母さんから聞いたと言えば、恭子さんが寝言で俺の名前を言ったという事を思い出し、そこから中嶋さんの事を思い出してしまった。
俺は言うべきか否か迷ったが、言ってみる事にした。
「恭子さん。中嶋さんに会いたくないですか?」
と。