最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜

そんな事、聞くべきではなかったかもしれない。俺は今や中嶋さんに勝っている。そう思ってるし、それを確認したくて聞いたのだが……


もし恭子さんが「会いたい」と言ったらどうするよ?

あるいは、そうは言わないまでも明らかに動揺したら、俺はどうしたらいいの?


しかし言ってしまったものは仕方ない。俺はドキドキしながら恭子さんの答えを待ったのだが……


「バカ」

って言われた。想定外の答えで、俺は唖然としてしまった。


「シマ違いだって言ったでしょ?」

「シマ違い?」


ああ、そう言えば言ってたかも。恭子さんが俺のアパートの前で倒れた時に。でも、その時は意味がわからなかったんだよな。今もだけど。


「同僚の中嶋君のシマは山編の“嶋”でしょ? 私が寝言で言ったらしい中島君のシマは、山編のない“島”なの。だからシマ違い。わかった?」

「えっ? つまり、人違いっすか?」

「そういう事。同僚の中嶋君には私からよく謝っておいたから」

「す、すみません」


なんだ、そうだったのかあ。

その“中島君”について、恭子さんは俺にざっと説明してくれた。中2の時の同級生で、恭子さんの初恋の相手で、5年間もの間ずっと目で追っていた事を。高校を卒業して以来、一度も会った事がない、とも。


その後、恭子さんは一瞬遠い目をしたが、俺は敢えて気にしない事にした。だって、俺にだって初恋の人はいるし、今でも思い出せば胸が疼く女の子の一人や二人や三人や四人や……って、そんなにはいないが、いる事はいるからね。


ということで、俺は話題を変える事にした。楽しい話題に……

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