最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「話は変わりますけど、田舎の両親に電話で恭子さんの事を話したんです」
「え? なんて?」
「もちろん、結婚したい女性だと言いました」
それは昨夜の事で、もちろん実話だ。ふと思い付き、田舎のお袋に電話したのだ。
「それはちょっと早過ぎじゃない?」
「なんでですか?」
「だって……」
「はい?」
「ううん、なんでもない」
「事実だし、早過ぎるって事はないと思いますけど?」
「そ、そうね。ごめんなさい、話の腰を折っちゃって……」
「ほんとですよ ……」
まだ本題にも入っていないのに恭子さんからそんな事を言われ、俺はちょっと面白くなかった。“だって……”の後も気になるが、まあいいか。
「そしたらですね……」
俺は気を取り直して話を続けた。
「式はいつ挙げるんだってうるさいんですよ。だから、来年の6月頃かなって言ったんです。ジューンブライドって言うじゃないですか?」
「…………」
あれ?
なぜか恭子さんが話に乗って来ない。それどころか、考え込んじゃってるみたいだ。