最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「は?」
「あなた今、好きな人は誰かを言おうとした?」
「はい、言おうとしました」
うわ。バカみたいにオウム返ししちまった。
「言っちゃダメ」
「え? どうしてですか?」
「聞きたくないから」
「なぜ?」
「なぜでもよ」
「いいえ、言わせてください」
「イヤだって言ってるでしょ?」
「俺は言いたいんです。だから言います。俺が好きなのは、く……」
「イヤーッ! 聞きたくない! 聞こえない! 何も聞こえないんだから! うわーっ!」
莉那先輩は両手で耳を塞ぎ、大声で喚き出した。
「ちょ、莉那先輩……」
「何にも聞こえないもんね! うわーっ!」
莉那先輩、マジっすかあ……!?
仕方なく俺は告白を諦め、莉那先輩の肩をポンポンと叩いて頷いてみせた。
「言わない? 絶対に言わない?」
と言う莉那先輩に俺が大きく頷いてみせたら、ようやく莉那先輩は耳から手を離した。
莉那先輩、あなたは子どもっすか?
他に客がいないからまだよかったものの、おばさんは顔に苦笑いを浮かべていた。