最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
*** 恭子Side ***
コートを脱ぎ、受付で渡された名札を胸に付けて会場の中に入った。立食パーティのスタイルらしい。心臓が弱かった頃は、立ちっ放しの立食はとても辛かったけど、今はもう大丈夫だもんね。
あ、先生だ。懐かしいなあ。ずいぶん白髪になっちゃって……
私は、当時の担任で数学の教師だった恩師にご挨拶する事にした。
「先生、お久しぶりです」
「おお。えっと、あなたは……」
と言って先生は困惑の表情を浮かべ、私の名札に目を落とした。やっぱり先生も私が誰かわからないみたい。仕方ないけどね。
「五十嵐君かい?」
「はい。先生は私なんか憶えてらっしゃらないですよね?」
「いやいや、そんな事はないよ。確か1学期のクラス委員だったよね? ちゃんと憶えてるさ。ただ……君はずいぶん変わったね? 何て言うか……とても綺麗になった」
「やだあ、先生ったら……」
「今、何をしてるのかな?」
「出版社に勤めています。と言っても、私はシステム開発専門ですけど」
「おお、そうかね。君は数学が抜群に得意だったからねえ、それを活かしてるわけだね?」
「それも先生のおかげです」
「そ、そうかね?」
などと先生と話していたら、先生の周りに大勢人が集まって来た。
私は先生を独占してはいけないと思い、静かにそこから立ち去ろうとしたのだけど、
「やっぱり五十嵐さんなの? あの、五十嵐さん? きゃー、驚いたあ」
「うわ、ほんとだあ。すげえ変わったなあ。こんな美人だったのかよ……」
「彼氏とか、いんの?」
なんか知らないけど、私は大勢の人に囲まれ、移動すらできなくなってしまった。
コートを脱ぎ、受付で渡された名札を胸に付けて会場の中に入った。立食パーティのスタイルらしい。心臓が弱かった頃は、立ちっ放しの立食はとても辛かったけど、今はもう大丈夫だもんね。
あ、先生だ。懐かしいなあ。ずいぶん白髪になっちゃって……
私は、当時の担任で数学の教師だった恩師にご挨拶する事にした。
「先生、お久しぶりです」
「おお。えっと、あなたは……」
と言って先生は困惑の表情を浮かべ、私の名札に目を落とした。やっぱり先生も私が誰かわからないみたい。仕方ないけどね。
「五十嵐君かい?」
「はい。先生は私なんか憶えてらっしゃらないですよね?」
「いやいや、そんな事はないよ。確か1学期のクラス委員だったよね? ちゃんと憶えてるさ。ただ……君はずいぶん変わったね? 何て言うか……とても綺麗になった」
「やだあ、先生ったら……」
「今、何をしてるのかな?」
「出版社に勤めています。と言っても、私はシステム開発専門ですけど」
「おお、そうかね。君は数学が抜群に得意だったからねえ、それを活かしてるわけだね?」
「それも先生のおかげです」
「そ、そうかね?」
などと先生と話していたら、先生の周りに大勢人が集まって来た。
私は先生を独占してはいけないと思い、静かにそこから立ち去ろうとしたのだけど、
「やっぱり五十嵐さんなの? あの、五十嵐さん? きゃー、驚いたあ」
「うわ、ほんとだあ。すげえ変わったなあ。こんな美人だったのかよ……」
「彼氏とか、いんの?」
なんか知らないけど、私は大勢の人に囲まれ、移動すらできなくなってしまった。