最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
*** 陽平Side ***


しばらくすると、突然恭子さんが中から出て来た。白いコートを着て、ちょっと急ぎ足で。

なんか、砂漠でオアシスに出会ったような気分だ。砂漠へ行った事はないが、きっとこんな感じなんだと思う。

すぐに駆け寄りたいが、そうも行かないしなあ、くそっ!


どうやら恭子さんは一次会だけで帰るようだ。確かに本人はそう言ってたわけで、俺は安心する一方、せっかくなんだからもっと楽しめばいいのに、とも思ってしまい、複雑な心境だった。ところが……


恭子さんは不意に立ち止まると後ろを振り向いた。すると、中から男が出て来た。まるで恭子さんの後を追うように。実際にそうなんだろうけども。


あいつは……中島という男に違いない。


俺はそう直感した。雰囲気がどことなく俺に似てるし。


中島らしき男、いや、中島さんと断定しよう、と恭子さんは立ち話を始めた。ここからでは声が聞こえず、何を話してるのかはさっぱりだ。


中島さんの態度に、何か不穏な気配を俺は感じた。そう。それは明らかに、女を何とかくどき落とそうという、下心見え見えという感じのやつだ。で、肝心の恭子さんはどうなんだ? わ、わからない……


二人の会話はなかなか終わりそうもなかった。いったい何を話してるんだろう。この後、どうするんだろう。


ああ、くそっ。走って行って、恭子さんを奪い返したい……

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