最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
*** 陽平Side ***


“今すぐ立ち去れ”と、俺の中で心の声がした。


そうすべきかもしれない。こんな覗きなんて、するべきじゃないんだ。

この後、恭子さんは中島さんとお茶しに行くかもしれない。それは俺としてはすっごく嫌だが、恭子さんを責める事はできないと思う。別に悪い事をしているわけじゃないのだから。


あるいはホテルに、とか……


そんな事、あるわけない。と思いたいが、もしかすると、あるかもしれない。なんせ相手は初恋の人で、5年も想い続けた人なのだから。


今立ち去れば、俺はそれを知らずに済む。なんだけども……。やはり足は動こうとしないんだよな、これが……


不意に恭子さんは中島さんに背中を向け、バッグに手を入れ何かを取り出した。携帯だ。そして何かの操作をし、耳に当てた。


恭子さん、何やってんすか?


と、その直後、俺のズボンのポッケの中で、携帯がブルブル振るえだした。取り出して見ると、恭子さんからの着信だ。あらま。

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