最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
*** 陽平Side ***


「もしもーし」

『私です。今終わったところなの』

「あ、そうすか。二次会に行くんですか?」


俺は何事もないような、軽い調子でそう聞いたが、内心はドキドキだった。果たして恭子さんは、何と答えるのだろうと思って。もしあからさまな嘘を言われたら、かなりショックを受けると思う。ところが……


『ううん、行かない』


呆気ないぐらいの即答で、俺はホッと胸を撫で下ろした。


『それでね、やっぱり実家に帰らないでそっちに行こうと思うんだけど、いいかな?』


もちろん俺に異論はなく、でも少しもったいをつけ、


「あー、いいですよ。迎えに行きましょうか?」


と答えた。


『ううん、大丈夫』


ですよね? ん? って事は、俺は恭子さんより早く帰らないといけないのか。うまく行くかなあ。


『ところで今、何やってるの?』

「い、家でゴロゴロしてますけど?」


ああ、嘘つくってイヤだなあ、と思っていたら、


「あなた、一人?」


茶髪の、もちろん見知らぬ女の子が俺に話しかけてきた。またかよ……
しかもこっちは電話中だっちゅうの!

俺は手振りでその子に“向こうへ行ってくれ”と頼んだのだが、


「ねえ、カラオケ行かない?」


構わず喋ってくる。どうでもいいが、君たちにはカラオケしか行くとこないのかい?


『ねえ、誰か来てるの?』

「な、なんでですか?」

『女の子の声がしたから……』


やべえ。恭子さんに聞こえてるよ……


「て、テレビです。はい。テレビの音です、たぶん」


俺は必死に言い訳をした。


『そう? じゃあ、今すぐ帰るから、待ってて?』

「はーい」


ふう。危うくばれるとこだったぜ……


「ねえ? 行こうよう」


まだ言ってる。諦めの悪い女の子だなあ。


「俺さ、これから猛スピードで帰んなきゃいけないんだよ。わるいね?」

「猛スピード? なにそれ、大げさなんだから……」

「いや、本当なんだって……って、あれ?」


恭子さんが、いない!

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