最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
*** 恭子Side ***


「中島君、放して。こんな事、ちっともあなたらしくない」

「黙れ。俺らしさだって? “いつもニコニコ笑顔の中島君”ってか? ふざけんな! 俺だって男だ。生身の普通の男なんだよ。女なんかに舐められてたまるか!」

「“女なんか”って何よ? 女性蔑視も甚だしいわ。あなたがそんな人だったなんて、がっかりだわ。力ずくで女をものにしようなんて、最低よ。人として、最低の行為よ。そう思わないの?」

「う、うるさい!」


おそらく中島君は彼女に浮気をされた直後で、頭に血が上ってるんだと思う。何とか説得しようと思ったんだけど、うまく行かないわ。


でも、私は絶対に諦めない。チャンスを見て、逃げてみせる。陽平君以外の男に抱かれるぐらいなら、死んだ方がマシよ!



とは言え、中島君に無理やり引かれながら、路地の奥の方まで来てしまった。何やら胡散臭い場所で、果たして私は逃げられるのだろうか……


とその時、後ろからダッダッダと人が走って来る音が聞こえたと思ったら、


「おい、その手を放せ!」


誰かが後ろから来て、中島君の腕をガシッと掴んだ。それは誰かなんかではなく、陽平君だった!


でも、なぜ陽平君が、ここに……?

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