最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
*** 陽平Side ***


よかったあ。追いついた……


「なんだよ、おまえは?」

「俺ですか? 通りすがりの者です」


と答えたのだが……


「陽平君……?」


もう、恭子さんったら……。通りすがりって事にしておきましょうよ?


「“陽平君”だあ? 五十嵐さんの彼氏かい?」

「い、いいえ。俺はただの通りすがりの……」

「そうよ。私の大事な大事な彼氏。可愛いでしょ?」


そう言って恭子さんは俺の腕にギュッと抱き着いた。

恭子さんってば……。それに“可愛い”って、俺はあなたのペットですか?


「ふん。彼女の事が心配で、こっそり覗きに来たわけか。ご苦労さまなこって」


ほらあ、言われちゃったよ。だから“通りすがりの者”って言ったのになあ。


「はい。確かにそうです。我ながらストーカーみたいで嫌でしたけど、今となっては結果オーライですよね? 恭子さんを返してもらいます」

「む……。五十嵐さん、見たところ彼はずいぶん年下ですよね? こんな頼りない男より、俺の方がいいんじゃないですか?」


ムム。なんて事を言いやがるんだ、こいつは……

< 188 / 191 >

この作品をシェア

pagetop