最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
*** 恭子Side ***


もう、陽平君ったら、なに勝手に人の気持ちを告ってるの? しかも過去の事なのに。恥ずかしくて、中島君の顔を見られないじゃない……


「その5年がどんなものか、正直俺は知りません。でも、俺と恭子さんが出会って愛し合ったこの半年間は……」

えー? 4ヶ月だけど?

「それより遥かに濃密な時間だという自信が俺にはあります。そして俺には、世界で誰よりも恭子さんを愛しているという自信がありますよ。恭子さんはどうなのか、あれですけど……」


「バカね。私だって愛してるわよ、あなたの事。世界中で誰よりも、一番に……」

「恭子さん……」

「陽平君……」


ああ、嬉しいわあ。陽平君にこんなにも愛されてるなんて、思ってなかったかも……


「ストーップ」

「え?」

「わかったから、ここでラブシーンは勘弁してください」

「ごめんなさい」


今、私は中島君の存在を完璧に忘れていたわ。止めてくれなかったら、陽平君にキスしてたかも。


「五十嵐さん、すみませんでした。俺、彼女に振られて頭がどうかしてたんです」

「きっといい人いるから、気を落とさないで?」

「ですかね?」

「いっぱいいるわよ。ましてあなたは素敵だもの……」

「きょ、恭子さん……!」


横で陽平君が抗議めいた声を出した。ちょっとばかり、まずかったかも。


「あはは。喧嘩になるからその辺で。俺はみんなと二次会に合流します。あ、君たち結婚は……」

「来年の6月にするわ」

「そうですか。お幸せに。では……」


と言って中島君は彼本来の爽やかな笑顔を残し、去って行った。

ああ、よかった。初恋の人のイメージが壊れなくて。と思ったけども、


「恭子さん……」


代わりに問題が発生したみたい。と言っても、拗ねた陽平君も、すごく可愛いけどね。

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