最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「“切れ者”?」
俺は思わず体を前に乗り出した。田上からじゃ大して情報を得られないと思ったが、そうでもなさそうだ。
「ああ。という噂だ。俺は担当がまるで違うから口も利いた事がないがな」
「そう言えばおまえって何を担当してるんだ?」
「俺か? 俺はコンソールさ」
「“コンソール”? 何だ、それは?」
「ネットワークやサーバーを監視しながら、マシンルームの入退室をチェックする仕事さ」
「ふーん、地味な仕事だな?」
「言うな」
おっと。田上の事なんかより、恭子さんの事を聞かなくちゃだな。
「五十嵐恭子さんって優秀なのか?」
「ああ。すこぶる優秀さ。おまえだって彼女のお世話になってるんだぜ?」
「え? 俺が?」
「正確にはおまえの部、つまり広告部だけどな」
「意味わかんねえ。ちゃんと説明しろよ」
「だよな。ほら、毎月広告代理店に請求したり、逆に入金したりしてるだろ? そのシステムを作ったのは彼女さ。しかも一人で、あっと言う間の短期間でな」
「はあ? 俺、担当が違うからよくわかんねえ」