最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「そう言えばおまえの担当って何?」
「あ? 企画制作って言ってだな……って、それはこの際置いといて、システムを作るってそんなに凄い事なのか?」
「これだから素人は困るんだよなあ。普通なら外注に出して開発費に数百万、下手した数千万掛かるシステムを一人で作ったんだぞ? しかも他の業務をしながら短期間で。部内の奴はみんなびっくりしたぜ?」
「ふーん、そういうものかあ……」
要するに恭子さんって人は、相当に頭がいい女なわけかあ。そんな女がなぜ俺なんかに……?
「で、その五十嵐女史がどうしたよ?」
「ん? 今度付き合う事になってさ」
「なにーっ?」
俺が考えなしにポロッと言ったら、田上の奴はすっとんきょな声を上げた。
「嘘だろ? あの五十嵐女史とお前が?」
「いやいや、誤解すんな。男と女としてじゃないんだ。あくまで友達としてだよ」
「はあ? “お友達”ってか? なんだ、それ? どういう事かちゃんと教えろ」
「それはだなあ、ある人からそう頼まれたんだよ。それしか言えん」
「それだけじゃ何の事かわからねえよ。もっと詳しく言え」
「言えない。おまえ、口が軽そうだから」
「ちぇっ」
と言ったきり追求して来なかったから、田上の奴は自分でも口が軽いと自覚しているらしい。
恭子さんの一件を説明するには、俺が莉那先輩に惚れてる事を言わなければいけないが、田上に話すつもりはない。バラされたら困るからだ。
「しかし“お友達”になるのも、おまえには厳しいんじゃねえかなあ」
「えっ?」
田上が気になる事を呟いた。