最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜

なんとか料理をほぼ完食。恭子さんも意外にけっこう食べてくれた。


「ふー、お腹いっぱいだあ」


と言って顔を上げたものの、恭子さんと何を話せばいいんだろう。「目が綺麗ですね?」とか言ってみるか?


というのは、恭子さんの唇を見ちゃいけないって事で、では恭子さんのどこに視線を合わせればいいんだろうかと考え、黒縁の眼鏡にしたのだ。眼鏡を見ちゃいけない、とは莉那先輩から言われてないし。


そして眼鏡を見ていたら、自然と恭子さんの目を見る事になり、そして俺は発見したんだ。恭子さんの目は、黒眼がちで大きく、澄んでいてとても綺麗だという事実を。

ついでに、化粧は全くしてないか、しててもごく薄く、という事も判った。それだけに口紅の毒々しいまでの紅に違和感があるのだが、おっと、それは見ちゃいけないんだったな。


とは言え、そんな歯の浮くような台詞は言いたくないし、言ったところで会話が続くとも思えず、さてどうしたものだろう。

下を向いてもくもくと食ってた方が気が楽だが、腹はパンパンでもう何も食えねえし……


と俺が困っていたら……


「そろそろ帰りましょうよ?」


と恭子さんは言った。唐突に、抑揚のない調子で。

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