最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
そんな俺に関係なく恭子さんは歩いて行き、慌てて彼女の横に並んだら……
「“俺”でいいのに……」
恭子さんが呟くように何かを言ったが、よく聞き取れなかった。
「はい?」
「“僕”なんて気持ち悪い……」
今度はちゃんと聞こえた。あ、そうか。恭子さんは“俺でいい”って言ったのか……
そう言われてもなあ。
俺は家族や男友達には“俺”と言い、その他は“僕”と言っている。それが礼儀だと思ってるからだ。
でも気持ち悪いのかなあ。そんな事、初めて言われた……
「莉那から聞いたわ」
「えっ?」
莉那先輩から、何を?
「アパートに一人暮らしって事も……」
……ああ、俺の家の話かあ。
しかし難しいなあ。恭子さんと話すのは。今度莉那先輩からコツを教えてもらおうかなあ。恭子さんと上手く話すコツを……