最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
地味女の豹変
恭子さんを支えながら来た電車に乗り込むと、会社帰りのサラリーマンやその他で車内は結構混んでいた。
優先席を見ると、俺と同じか少し若いかもしれない男が股を広げて平然と座っていた。どう見ても具合が悪いようには見えない。しかし見た目だけで決めつけてはいけないので、俺はその若者に向かい、
「すみません。この人具合が悪いんですが、席を譲ってもらえますか?」
と穏やかに頼んでみた。するとその男は俺を見上げてギロっと睨み、次に恭子さんの顔を見てから、「チッ」と舌打ちして席を立った。
男の舌打ちにはムッとしたものの、譲ってくれただけマシと思い、
「ありがとうございます」
と礼を言って恭子さんを座らせると、恭子さんはホッとしたような様子だった。
腰を屈めて恭子さんに降りる駅を聞いたら、俺が降りる駅の4つぐらい先だった。もちろん俺は、恭子さんを自宅まで送って行くつもりだ。