最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「…………えっ?」
「おね……」
「ダメです!」
俺は恭子さんに“お願い”と言わせなかった。それを言われたら断れないからだ。いやあ、我ながら素早い反応だった。
恭子さんの手首を掴んで俺の首から退かすと、恭子さんは俺の事を睨んだ。
「どうしてよ?」
「恭子さんは具合が悪いんですから、大人しく寝てないとダメです」
「もう落ち着いたから大丈夫だもん」
恭子さんは口を尖らせてそう言った。拗ねた恭子さんは初めて見るが、ちょっと……いや、かなり可愛いな。
「聞いてませんか? 俺と恭子さんは恋愛抜きだって。莉那先輩、じゃなかった楠さんから」
俺には好きな人がいるから、恭子さんと付き合うのは恋愛抜きの友達として。そういう約束を莉那先輩としたし、それは当然恭子さんへ伝わっているはずだが……
「言い直さなくてもいいわよ」
「え、なんの事ですか?」
「あなた、心の中じゃ“莉那先輩”って呼んでるんでしょ?」
「そこですか? はい、まあそうです」
「愛情を込めてでしょ? 相当に好きなのね?」
「えっ?」
「しらばっくれないで。莉那の事よ」
「それは……」
「今更隠しても無駄よ。私、とっくに知ってるんだから……」