最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
背筋を伸ばして営業の“島”を見たら、莉那先輩が席に座っているのが見え、俺はすかさず席を立った。
「楠さん……」
「あら、川田君、おはよう。昨日はどうだった?」
「えっと、それが……。今、時間ありますか?」
「大丈夫だけど?」
莉那先輩と俺は職場を出て、通路に面したミーティングスペースで向かい合わせに座った。
「どうしたの?」
「それがですね、恭子さんが今日、会社を休んでるんです」
「あ、そう?」
うわ、莉那先輩も軽いなあ。この会社って軽い人ばかりなのか?
ま、莉那先輩は昨夜の事を知らないんだから、それも無理はないか。
「俺、すごく心配なんですよ。昨夜の恭子さん、具合が悪かったんで……」
こう言えば、恭子さんと仲がいい莉那先輩は当然心配すると思ったのだが……
「ああ、そういう事ね……」
と言い、なぜかニコニコしていた。例の“100万ドルの笑顔”で。