最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「いいのに、わざわざ立たなくても……」
「いいえ、そんな失礼な事はできませんから」
莉那先輩は俺の反応に驚いたみたいで、綺麗な目を大きく見開いた後、困ったような顔で俺を見た。
莉那先輩の身長は、ハイヒールを履いた状態で170センチぐらい。俺の身長は185センチ前後だから、莉那先輩はやや上目遣いで俺を見上げる事になり、それがまた何とも綺麗、というより可愛いくて堪らない。
「仕事の話じゃなくて悪いんだけど……」
いや、全然悪くないっすよ。むしろ歓迎です、莉那先輩。
「今夜って予定ある?」
「ぼ、僕ですか?」
「うん」
「ないです。ひとつもないです!」
俺は何も考えずにそう答えた。ま、考えたとしても予定なんてあるわけないのだが。
「そう? 折り入って話したい事があるんだけど、食事をしながら、ってどうかしら?」
「そ、それは、楠さんと僕の二人で、ですか?」
「そうだけど?」
「い、行きます! 何が起きても絶対行きます!」
「そう? よかった」
そう言って莉那先輩は、“100万ドルの笑顔”で微笑み、俺はクラクラっと眩暈を覚えた。
まさか、夢じゃないよな?