最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「楠さんは心配じゃないんですか?」
俺にしては珍しく責めるような口調になってしまった。実際のところ、俺は莉那先輩ののんびりした反応にイラッとしていた。
「も、もちろん心配だわ。あなたが最後に見た時、あの子どんな様子だった?」
莉那先輩は一転して真面目な顔つきになった。
「そうですね……。スヤスヤ寝てました」
俺が最後に恭子さんを見たのは、俺のベッドでスヤスヤ眠る姿だったので、それを言ったのだが……
「えっ?」
莉那先輩は目を丸くして驚き、それを見た俺は、大変な失言をした事に気がついた。
「あ、えっと、それはですね、で、電車です! そう、電車の中でって事です。はい」
うわ、脇の下から汗が噴き出してるよ……
「ああ、そういう事ね?」
「そういう事です」
ふうー、あぶなくバレるとこだった……
「って事にしといてあげるわ」
「えっ?」
やっぱバレてる?
「だったら心配しなくていいんじゃない? あ、今日って金曜日よね?」
「あ、はい」
「えーっと、やっぱりそうだわ。今日はね、恭子は予定の休みよ?」