最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「予定の?」
「そう。毎月、最終金曜日は休んでるのよ」
「へえー、なんでですか?」
「それは言えないわ。個人情報だもの。本人に聞いてみたら?」
「はあ……」
なんだ、そうかあ。でも、毎月の用事って何だろう。習い事とかか? 今度聞いてみるかな。
「そういう事だから、心配しなくていいと思うわよ?」
「そうですね。お騒がせしました」
と言いながら、職場に戻るべく二人は椅子から立ち上がった。
「恭子ってさ、案外可愛いとこあるでしょ?」
並んで歩き始めつつ、莉那先輩は俺の顔を覗き込むようにしてそう言った。
「そ、そうですね」
確かにそう思う。恭子さんって、最初は地味でぶっきらぼうで感じの悪い女性だなと思ったが、接している内に、いつの間にかそんな風に思うようになっていたんだ。
「あの子、すっごいウブで、もしかするとまだ処女かもしれないわ」
ちょっと……
そういう情報は最初に言っておいてくださいよ……
「あ、処女だった、って言うべきかしらね?」
莉那先輩は、目を細くして責めるような顔で俺を見た。本気で責めてるわけではなさそうだが。
昨夜のこと、絶対バレてる。知ってて俺をからかってるよ、この人……
「先輩が何を言ってるのか、俺にはさっぱりわからないっす」
一応、惚けてみた。
「とにかく恭子の事、よろしくね?」
「はあ……」
今のやり取りで、俺と莉那先輩の距離はますます離れたと思うが、なぜだろう。あまり残念じゃないや。