最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「確かにそのはずだったんだが、わからなくなったよ。自分の気持ちが……」
「なるほど。やはり昨日の出来事がおまえに心境の変化をもたらせた。違うか?」
「違くない。その通りさ」
「じゃあ言ってくれ。昨日、何があったかを」
「わかった」
俺は昨日の事を要約して田上に話した。恭子さんを可愛いと思った事や、彼女の処女を奪った事、そして彼女が寝言で中嶋さんの名前を言った事も、すべてを、洗いざらいに。
「ふうー。ずいぶんと濃い一日だったな?」
俺の話を聞き終えた田上は、開口一番にそう言った。
「まあな」
「それはそうとおまえ、それ食わねえの?」
俺はラーメンも餃子も途中で食うのをやめていた。食欲がなくなったからだ。田上はもちろん完食していたが。
「ああ。なんか食欲がないんだ」
「恋の病(やまい)でか?」
「はあ? バカにすんなよ」
「いやいや、バカにしたわけじゃない。おまえは恋してるよ。楠さんではなく、五十嵐女史にな」
「そ、そうなのか?」
自分でもそうなのかなあ、とは思っていたが、まさか田上からズバッと言われるとは思わなかった。