最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「だったら、莉那先輩の事はどうなんだろう?」
自分の気持ちを人に聞くってどうよ、と思うが聞いてみた。田上なら教えてくれるんじゃないかと思って。
「単なる憧れだな」
「憧れかあ。それと“好き”って違うのか?」
「違う、と思う。憧れっていうのはだな、例えばアイドルとか、学校の先生とか、遠くから見て“いいなあ”と想う感情じゃねえかな。見てるだけで満足できるってえのが特徴だな。中には例外もあるだろうが」
「見てるだけで満足、かあ……。なるほど、おまえ頭いいな?」
確かにそうだ。俺は莉那先輩をいいなあと思い、できれば告白したいなあと思ったが、別にしなくてもよかったんだ。見てるだけでよかったんだよ。うん。
でも、恭子さんは違うな。抱き締めて、キスして、またやりたい。今度は優しく。
って言うより、会いてえよ。今すぐ、ものすごく。でもなあ。その恭子さんは中嶋さんが好きなわけで……
「はあー」
思わず溜め息が出てしまった。
「おいおい、色っぽく溜め息なんかつくな。変な気を起こしそうだ」
田上はギャグっぽい事を言ったが、面倒だからスルーで。
「ああ、わりい。でもさ、恭子さんは中嶋さんが好きなんだよなあ。それを思うと泣きたくなるよ」
「それは無視でいい」
「はあ?」
“無視”って、どういう事だ?
「だって、そうだろ? 五十嵐女史は深層心理じゃ中嶋さんに惚れてるかもしれないが、現実ではあの人を諦めておまえに抱かれたわけだろ? これからはおまえにメロメロにさせればいいだけじゃね? そうすりゃ、深層心理からも中嶋さんは消えてなくなるさ」
「そうかなあ」
「そうさ。おっと、もう時間だ。行こうぜ?」
「あ、ああ」
なんか予想外だが、田上のおかげですっきりした気がするな……