最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
莉那先輩の所へスタスタと歩いて行くと、彼女はパソコンの画面を見てニッコリ微笑んでいた。
「あの、楠さん?」
「あら、川田君。おはよう」
「おはようございます。実はですね、楠さんには申し訳ないのですが……」
「ん?」
「今日のお昼、恭子さんは僕と……」
「ああ、そういう事?」
「はい。二人で話したい事があって、楠さんは、その……」
何て言っていいかわからず俺は口ごもってしまった。「来ないでください」もアレだし、「邪魔です」なんてもっての他だしなあ。
「わかってる。二人でゆっくり話せば?」
「え?」
「今、恭子からも言って来た。あなたと同じ事を。ほら」
そう言って莉那先輩はパソコンの画面を指差した。つまり、恭子さんから莉那先輩にメールかメッセージが来たわけか。莉那先輩はそれを見て微笑んでいたんだな。
「そ、そうですか?」
「これからは一々私に言わなくていいわよ。二人の邪魔はしないから」
「はあ。では……」
と言って自分の席に戻ろうとしたら、
「ちょっと待って。耳貸して?」
と莉那先輩から言われた。
「あ、はい」
と言って腰を屈めて莉那先輩の顔に頭を近付けたら、
「あなた達、ラブラブね?」
と小声で言われた。
「な、何を言ってるんですか?」
思わず俺が大きな声で言うと、莉那先輩は「シッ」と人差し指を口の前で立て、満面の笑顔を俺に向けてくれた。
うわっ。100万、いや200万ドルの笑顔だ。