最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「へ?」
莉那先輩は目を丸くしてキョトンとしている。そんなに驚くほどの事だろうか。
恭子さんが俺のアパートに泊まるのはしょっちゅうで、おそらく自分の家にいる時間より俺んちにいる時間の方が長いんじゃないかと思う。
「それでどうなの? 恭子の具合は……」
「さあ、わかりません」
「わからないって、あなた、無責任でしょ!?」
うわっ。莉那先輩に激しく怒鳴られちまった。でもなあ……
「だって俺、女性の微妙な体の事はよく、っていうか全然わからないですから……」
「え? どういう事?」
「彼女、昨夜生理になっちゃったんです。で、今回は“重い”とか言って、会社を休んでるんですよ」
「ああ、そうだったんだあ」
莉那先輩はホッとして、力が抜けたらしく肩を落とした。
「あの、“重い”ってどういう事なんですか?」
「そんな事、私に聞かないで」
「すみません……。あ、そうだ。楠さん、少し時間ありますか?」
職場に戻り掛けてから、俺はふとある事を思い付き、莉那先輩に声を掛けた。