最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
地味女の本心
「嘘でしょ? あの子がそんな事言うわけない」
「いいえ、言ったんです」
「いつ?」
「最初の日です」
「まだ処女のくせに?」
「あ……そうなりますね」
「もし本当に言ったとしたら、それはお芝居よ」
「お芝居? ……あっ」
そうだ。恭子さんもそう言ってた。確か最初の日から週が明けた昼に、二人で行ったレストランで、“一世一代の大芝居だったの”って……
「そんな無理なお芝居をしなきゃいけないような状況だったんじゃないの?」
「状況、ですか? ん……ああ、そうです。恋愛抜きだって、俺が言ったんです」
「なんだあ、それでよ? あの子ったら、よっぽどあなたに抱いてほしかったのね?」
「い、いやあ、それは……あはは」
「“あはは”じゃないわよ。罪作りなんだから、もう。もしかしてあの子、今でも恋愛抜きじゃないといけない、って思ってるんじゃないの?」
「あ、そうかもです」
「あなたから“好き”って言ってあげれば、あの子だって喜んで本心を言うと思うわよ?」
「ですかね?」
「そうよ。じゃあ、私はもう行かなくちゃ」
「貴重なご意見、ありがとうございました!」
俺は莉那先輩に深々と頭を下げた。莉那先輩のおかげで、目から鱗が落ちる思いだった。
さすが莉那先輩。彼女に相談してよかったなあ。
「川田君は恭子にとって生きる希望なんだから、頼むわよ?」
莉那先輩は最後にそんな言葉を残し、小走りで職場に戻って行った。
“生きる希望”だなんて、ずいぶん大げさな事を言うなあ。莉那先輩は……