最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
部屋の前で、俺は敢えて呼び鈴を押した。自分の鍵で開けるのではなく。
『ど、どちら様でしょうか?』
予想した通り、インターフォンから困ったような恭子さんの声が聞こえて来た。俺は覗き穴を、見えないように指で塞いでいたんだ。
「君こそ誰だ? ここは息子の部屋のはずだが」
俺はふざけて親父の声色を真似た。
『は!? わ、私は……』
「恭子さん、ただいま!」
『まっ……』
カチャカチャっと音がしてドアが開くと、頬っぺを膨らませた恭子さんが顔を覗かせた。
「もう、川田君ったら!」
「驚いた?」
「当たり前でしょ? 本当にお父様がいらしたのかと思ったわ?」
「そう? でも、いつか本当にそういう事があるかもですよ?」
「え?」
と言って薄く開いた恭子さんの口を、俺はすかさず自分の口で塞いだ。
「んん、ちょっと……」
「俺、早くこうしたくて、急いで帰って来たんです」
「川田君……」
俺は鞄を床に降ろし、恭子さんの柔らかな体を両腕でギュッと抱きしめ、もう一度彼女の唇を奪った。少し乱暴なくらいに強く、うんと淫らに……