最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「あん、もう……今日はどうしたの?」
「まるで恭子さんが俺の奥さんになってくれたみたいで、俺、嬉しくて……」
「えっ?」
俺は笑顔で言ったと思うけど、なぜか恭子さんは黙ってしまい、仕舞いには俺から目を逸らしてしまった。
俺がいきなり“奥さん”なんていう際どいワードを使ったから、戸惑ったのだろうか。それとも、嫌だったとか?
いやいや、戸惑ったのさ。うん。ネガティブに考えるのは良くない。
俺はそう自分に言い聞かせた。
「お、この匂いはカレーですね?」
「そ、そうなの。何にしようか考えたんだけど、結局カレーにしちゃった。私、あまり料理は出来なくて……ごめんね?」
「そんな、謝らないでくださいよ。俺、カレーは大好きなんで、全然オッケーです!」
恭子さんからはメールで何を食べたいか聞かれたが、何でもいいと俺は答えていた。実際、恭子さんが作ってくれたものなら、俺は何でも美味しく戴くつもりだ。
「そう? よかった。お風呂が湧いてるけど、先に入っちゃう?」
「ん……風呂は後にします」
おお、こういう会話、してみたかったんだよなあ。新婚の夫婦みたいじゃね?