Destiny
それから、私は不良患者と化し、毎日脱走を繰り返すようになっていた。


そのうち、ベッドの回りには特殊なマットが置かれ、それを踏むとナースコールがされるという仕組みのものだったけれど、それさえも飛び越えて脱走する私に早川先生や看護師さんは手をこまねいただろう。


早川先生は来るたびに脱走したことに対する説教をしていたけれど、私は退院したいから脱走するんだとしか言わないようにした。


早川先生の誠実さを踏みにじるようで辛かったけれど、退院のためなら仕方ないと思った。


いや、そうするしかなかった。


< 101 / 167 >

この作品をシェア

pagetop