Destiny
正面玄関を出ようというところで名前を呼ばれた。


毎日2回は聞いていた聞き慣れたあの声。


最後だし、シカトするのも可哀想だから私は静かに振り返った。


「退院おめでとう…」


必死に走ったのか息を切らしてそう言われた。


「ありがとうございます。」


「これからの生活はこれまでの生活とはまるっきり違うと思う。そして、これからの生活で大切なことは無理をしないってことだ。あと、外来には絶対来ること。」


「わかってます…」


「そうだよね、それじゃあ、気を付けてね。来週待ってるよ。」


そう言って早川先生は手を差し出した。


私はその手をとって握手をした。


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