ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐
木陰に座り込み、エルクは改めて辺りを 見渡した。
芝生の色や、空の色。
クロロプラスト王国と似ているのは、自 然の色だけだった。
公園の脇に伸びるアスファルトの道路に は、自転車に乗った子供や、車を運転す る高齢者の姿があった。
そのどれもが新鮮で、エルクは思わず、 キョロキョロしてしまう。
かたわらに座った青乃臣はクスリと笑 い、
「エルク様にとっては、珍しい景色かも しれませんね」
「だってさ、あんなモン、アムドの城下 街にはなかっただろ?」
エルクは車を指さした。
「ええ、そうですね。
日本には、優れた技術者が多いのだと か。
彼らの努力の賜物(たまもの)でしょ う」
「それに比べて、俺様の国はダメダメだ な。
ラークリマの魔力に頼って、なまけてる みたいに見える。
誰も、自分からすすんで物を作ろうなん てしてなかったし。
……にしても、お前はあんまり驚いてな いよな、ジョー。
ていうか、異世界に来たとは思えねぇく らい、冷静だよな。お前は、いっつもそ う」
「誉め過ぎですよ。
私は、エルク様の執事として、当然の仕 事をしているだけです」
「ここまで一緒に来たのがジョーで、ホ ントに良かったぜ」
エルクは安心半分、あきれ半分な顔で青 乃臣をいちべつし、芝生の地面に背中か ら寝転んだ。
どちらにせよ、ヴァンパイア化してし まった体では、夜まで活動できそうにな い。