ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐

背中が壁に接するまで追い込まれてようやく、 青乃臣は口を開いた。

「エルク様……!

私の説明には穴がありました!」

「なんだって!?」

エルクは詰め寄るのをやめ、青乃臣の言葉に耳 を傾けた。

「ここは日本です。

地球全体を見渡しても、こんなに平和で争いの ない国は珍しいでしょう。

ということは、よほどのことがない限り、未来 様の身に危険が及ぶ可能性は低い。

もちろん、私は常時、彼女の無事を確保いたし ます。

ただ、そういったことからも分かるように、エ ルク様に必要なのは身体的な強さを身につける ことではありません。

未来様の心をお守りすることに集中した方が、 得策かと」

吸血拒否の口実だったが、最後の方は青乃臣の本心そのものだった。

「日常生活の中で、彼女と楽しい時を過ごすこ とが、ラークリマ入手への近道になると考えら れます。

好意を抱いた女性を相手にこんな打算的な思考 を巡らせるのは嫌なものですけれどね……」

青乃臣は寂しげに窓の外を見つめた。

一匹のコウモリが飛んでいる。
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