ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐

こちらの生活に慣れはじめてようやく、エルク は父親や国のことを考えられる心持ちになった 。

「みんな、俺様とジョーがいなくなって慌てて んだろなぁ」

イタズラが成功した子供のように、エルクは笑 みを浮かべる。

「にしても、親父のヤツ、なんでラークリマを 持ち逃げしたんだ?

城での暮らしに飽きて、逃亡生活でも味わって みたくなった、とか?」

秘宝を持ち逃げした父親に、城で退屈していた 自分の心境を投影するエルク。


クロロプラスト王国に建つアムド城。

エルクは青乃臣のように魔術を使えないので、 自国の様子を知る手段を持たない。

「こっち来る前は、『秘宝が失くなったことは 城の人間だけの秘密だ!』って、みんな大騒ぎ してたけど……。

そろそろ、親父がラークリマを持ち逃げしたん だってことが国民に知られてもおかしくない頃 だよな」

深刻なことを口にしてみるものの、現場に居な いせいか、あるいは、こちらの生活に心地よさ を覚え始めたからか、エルクはイマイチ緊迫感 を持てないでいる。
< 168 / 308 >

この作品をシェア

pagetop