ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐
「ああ、ちょっとな。
『狩り』に行ってくる!」
「狩り、ですか?」
青乃臣は不思議そうに尋ねる。
「お前こそ、こんな時間まで働いてないで、そ ろそろ寝たら?
昨日も寝てないみたいだし、明日も早いんだろ 」
執事の問いを無視して、外に出ようとするエル ク。
青乃臣はエルクの腕を強めに引き、
「どちらへ?」
「お前には関係ねぇっ」
「行き先くらいは教えて下さらないと、困りま す。
万が一エルク様の身に何かがあった場合、お助 けできません。
かと言って、私は未来様をひとり残して屋敷を 抜けるわけにはいきませんから、エルク様にも 付き添えませんし……」
「そんなの必要ないって!
さっき、お前が言ったんじゃん、日本は平和だ って」
「そうですが…!」
「じゃあなっ。
朝までには帰る、グチグチ心配すんな」
「エルク様……!」
強引に扉を閉めることで青乃臣の制止をさえぎ り、エルクは駆け足でその場を後にした。
春の夜はやや肌寒いが、しばらく走っていると 、爽快感と重なりエルクの体はあたたかくなっ た。
「俺様の時間がやってきたぜぃ!」
エルクは両手を天に向け、人のいない夜道を駆 け出した。
体を動かすのは、こんなにも気持ちがいい。
「やっぱり外の空気は最高だなっ!」
行き先は決まっていない。
エルクは、手当たり次第に柿の木を探すつもり なのだ。