ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐

しんと静かな、夜の歩道。

所々、屋内灯のついた家はあるものの、人の気 配と言えばそれだけ。

道を歩いているのはエルクだけだった。

昼間のダルさがウソみたいに、今はキビキビ動 ける。

「昼間もこのくらい動けたらいいのになぁ」


住宅街が広がっており、柿の木があるとは思え ないような人工的な風景が続く。

エルクはまず、稔の柿畑跡地を目指した。

日本に訪れた時、稔に話しかけられた公園。

元々たくさん柿の木があったのだから、今も一 本くらい残っているに違いないと思った。

しかし、公園を包むように植えられた木々は、 実のない常緑樹ばかり。

「柿は、オレンジ色の固くてツヤツヤした実、 だっけ。

そんなの、なさそうだな……」

公園を一周し終えたエルクはため息をつき、ベ ンチに座る。

乾いた夜風が、体に吹き付けた。
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