ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐
不満げな未来を見つめ、祖父・包里稔 (かのさと・みのる)は、事情を話し た。
「青乃臣さんが家を管理する能力は、そ んじょそこらの家政婦にも劣らん。
異世界の王子・エルクさんに仕えている 執事なんじゃ。
家事なんて、朝飯前じゃぞ?
毎日、うまい飯が食えるぞ?」
稔の横で、青乃臣は彼のセリフに照れて いる。
稔は目を輝かせ、
「それにな、エルクさんの国は、いま大 変らしいんじゃ!
国王が秘宝を持ち逃げしてな。
エルクさんは、代わりになる宝を求め て、はるばる地球までやってきたん じゃ!」
「まーた、始まった」
稔の話を本気にせず、未来は軽くあし らった。
「相変わらずだね、おじいちゃん。
本屋やってるのも、店番しながら毎日 ファンタジー小説を読みあさりたいか ら、って言ってたっけ?
個人の好みに口出す気はないけど、妄想 をこっちにまで押し付けるのはやめて よ。
それに、他人(ひと)にそんな話してた ら、間違いなく頭のおかしい人って笑わ れるよ?」
青乃臣と稔の横をすり抜け、未来はツン とした顔で玄関扉を開けた。
稔はヨタヨタした足で未来を追いかけ、
「未来! 信じておくれ!
これは妄想でも幻覚でもない、真面目な 話なんじゃよ!」