ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐

国王に頭を下げる青乃臣の姿は、エルクの執事 であることを貫く彼の真っ直ぐな忠誠心を表し ていた。

青乃臣を見て、カンタスターレは眉をひそめる 。

「青乃臣。お前が真摯(しんし)であればある ほど、私はエルクのことが可哀相になる……」

「それは、どういった意味でしょうか?」

カンタスターレを見つめる青乃臣の瞳に、陰が さした。

「エルクを見ていると、私は不憫(ふびん)に なる。

お前も気付いていただろう。

エルクにとって、国王の座を受け継ぐのは荷が 重すぎると……。

アイツはいつも、王子の立場を嫌がり、地位を 捨てたがっていた。


私がラークリマを持ち出したのは、エルクを自 由にするためだったのだ。

これがあると、アイツは一生、あの城に縛りつ けられることになる……」

カンタスターレは、羽織りの下に手を入れ、城 の宝物庫から持ち出した国宝・ラークリマを目 の前に翳(かざ)した。

持ち逃げされた当時より、ラークリマは小さく なっている。

放たれる魔力は台座に置かれている頃より弱く なっており、ラークリマ独特のエメラルドグリ ーンの光もまた、弱々しく瞬いていた。
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