ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐
青乃臣が魔術ドリンクを作り終えたのは、それ から三時間が過ぎた頃だった。
「完成です! うまくできました」
包里家の鍋を使って作った魔術ドリンク。製作 途中は、一見イチゴジャムのようでもあった。
それを飴に変えると、それは、赤色の丸い粒と なって、白いツヤが生まれた。
「イチゴ使ってるのは見てて分かったけど、ま さか、ジャムみたいな液体がこんな固形物にな るなんて……」
未来は息をのんで、飴を一粒つまんだ。
プレートの上に行儀よく並べられた赤色の飴か らイチゴの甘い匂いが放たれていて、見学組だ った未来とエルクは思わずツバを飲んだ。
「試食されますか?」
「いいの!?」
二人のセリフがかぶる。次の瞬間、二人の口に は出来立ての魔術飴が放り込まれた。
「まだちょっとあたたかい…! でも、甘酸っ ぱくておいしい…!」
未来は、感動した。市販ののど飴の数倍も清涼 感がある。濃厚な味わいなのに、しつこくない 甘さ。
「こんなうまい飴、初めてだ…!」
エルクも、天に昇るかのように幸せな気持ちに なった。
「気にいっていただけて安心しました。
久しぶりに作ったので、本当のところ、腕がな まっていないかと心配していたのですよ」
微笑を浮かべ、青乃臣は安堵する。
楽しい時間は過ぎるのが早い。
いつの間にか、夜はすぐそばまで近づいていた 。
開け放したままの窓から吹き込む風が冷たくな る、春の夕方。
エルクと青乃臣は、未来との別れを嫌でも考え なくてはならなかった。