ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐

「ああ……」

エルクはしぶしぶ立ち上がり、リビングで青乃 臣と向き合った。

青乃臣も、エルクと同じく、不本意な顔をして いる。

「本当に、もう、帰らなきゃなんないんだな… …」

「そうですね。こちらに留まりたいというお気 持ちには共感しますが……」

ここからは、青乃臣の魔術を使って、未来の通 う中学まで空間移動するのである。

「俺らがここに来たこと、結局は無意味になっ ちゃったな。ラークリマは、こっちで手に入れ なくても良くなったわけだし……。

でも、未来と出会えたことは、無意味なんかじ ゃないよな?」

名残惜しそうにつぶやくエルク。未来の部屋が ある2階を見上げつつ、短かった包里邸での日 々を懐かしむ。

「エルク様……」

「わりぃな。時間取らせて。

つらいのは、お前も同じだろ、ジョー。

俺様だけ泣き言言うわけにいかねぇな!」

しんみりした面持ちから、挑戦的なまなざしに 素早く切り替えると、エルクはテラスに飛び出 した。これ以上ここに居ては、旅立ちの決意が 鈍りそうだ。

「帰るぞ、ジョー。

俺様達の国に…!!」

「はい…! いきましょう!」
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