ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐

エルクがひとり意気込む横で、カンタスターレ は青乃臣に近づき、

「さっきは、すまなかった……。

冷静さを欠いていたとはいえ、ひどい事を言っ てしまったな、私は」

「え……?」

国王から直々に謝まられ、青乃臣は目をしばた かせた。

カンタスターレは申し訳なさそうに、

「私は、お前のことを誤解していたようだ。

今のエルクがあるのは、青乃臣のおかげだとい うのに……。

近すぎて見えなくなるものもある、……なんて 、私にとって都合の良い言い訳にしかならない が、許してくれ。

エルクのことばかりに目が行き、お前のありが たみを見落としていた」

「いえ、そんな……! カンタスターレ様、ど うか頭を上げてくださいっ。

私は気にしておりませんので」

カンタスターレは恐る恐る頭を上げ、青乃臣を 見つめた。

「これからも、エルクのことをよろしく頼む… …。

お前以外に、任せられる執事は他にいない」

「喜んで、お引き受けいたします…!」

わだかまりのなくなった国王と執事を見て、エ ルクはノンキな口調で、

「なんか楽しそうだな!

そのままの雰囲気で、サクサクッと帰還しよう ぜ!」


地球からスアンに空間転移するには、大量の気 力を消耗する。

ひとりあたりの負担を減らすため、青乃臣とカ ンタスターレは協力して魔術を使い、エルクと 三人で自分達の国に戻った。

異空間に溶け込む寸前、エルクは夜空に向かっ て大声で叫んだ。

「未来! お前のこと、大好きだぞー!」

彼女には届かなかったけど、かけがえのない恋 だった。

エルクのバッグには、未来とおそろいのマグカ ップが入っている。









【8 最後の夜…終】

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