ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐
「ワシが説明するよ」
みんなをソファーに座らせると、稔が言った。
「未来。エルシュさんは、ワシのソウルメイト じゃ。
半年前、エルクさんがワシのところに来て、エ ルシュさんと会わせてくれたんじゃよ」
半年前。未来が、屋上でエルク達と再会した直 後、エルクと青乃臣は、再びソウルメイト探索 魔術を使い、エルシュのソウルメイト探しを成 功させた。
驚くべきことに、エルシュのソウルメイトは、 日本に住む包里稔だった。
稔とエルシュは、本日、半年ぶりに再会したの だという。
稔は嬉しそうに言った。
「ワシにもソウルメイトが存在するなんてのぅ 。今でも、夢を見とる気分じゃよ。
ソウルメイトについては、ワシから説明するま でもないだろう。
未来はよく知っとるじゃろうし。
ワシとエルシュさんは、前世でファンタジー小 説の作家をしておったらしい。しかも売れっ子 だったんじゃと!」
興奮を極める祖父を見て、「なるほど、分かり やすい」と、未来はあっさり納得していた。
「エルシュさんのことはよく知らないけど、エ ルシュさんを見たとき、おじいちゃんと同じ空 気を感じたしね。
言葉では説明しづらい、不思議な感覚なんだけ どさ」
うんうんとうなずきながら、青乃臣が言葉を挟 む。
「未来様のおっしゃる通りです。
私も、同じ気持ちでした。
エルシュ様がアムド城にみえた時、初対面なの にも関わらず、以前にもお会いしたことのある 気がしたのです。その理由が、分かりましたよ 。
エルシュ様とお話ししていると、稔様と対面し ている感覚でしたから」
「エルシュと稔じいさんの出会いから、俺様は 新しい可能性を見出だした。
クロロプラスト王国は、新たなシステムを導入 することにしたんだ」
エルクは立ち上がり、言った。
「クロロプラスト王国の人間は、今後、積極的 に日本人との交流を持つべきだと考えた。
この半年間、俺様はそのための環境を整えてい た。
もちろん、我が国はソウルメイト探索魔術につ いての研究費や、日本への滞在にかかる費用も 惜(お)しまない」
エルクの発言が、『例の件』について言ってい るのだと、ようやく未来にも分かった。