ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐
エルシュと稔の顔を交互に見て、エルクは言っ た。
「手始めに、エルシュを稔じいさんの家に滞在 させる。つまり、ホームステイってわけだ」
幸い、エルシュはその件に賛成している。
未来は、「そんな重大なこと、勝手に決めてい いの!?」とツッコんだ。
エルクは自信満々に胸を張り、
「俺様にはその権限があるんだ。もちろん、最 終的な許可を国王(親父)に取らなきゃいけな いけど、今回の件に、親父は賛成してくれたし な。
アムド城、ならびに、クロロプラスト王国を生 かすも殺すも俺様次第だ。
目の前のことにグダグダ言ってたって、何も変 わらねぇ。
だったら、より良くなるよう考えて、誘導する までだ!」
ソウルメイト探索魔術を使用することによって 、クロロプラスト王国には新しい風が流れた。
平和を守りつつも、自分達とは違う世界を知る ことで視野を広める喜び。
まだ、多くの国民は、ソウルメイトと出会って いない。みんな、魔術を習得するのに必死だ。
だからこそ、毎日に活気が生まれる。
やるべきこと、やりたいことが見つかると、人 は自分の力で動こうとする。
エルクは言った。
「ラークリマが存在することで、クロロプラス トは豊かな国になり、みんなも幸せに暮らして た。それも幸せの形だ。否定はしない。
ただ、与えられるばかりでは、自分の存在を希 薄に感じてしまう。
せっかく生きているんだから、好きなことした り、誰かを助けたり、好きになったりしたい。
刺激的な日常を、国民にも送ってほしい……。
日本にきて、俺様は知ったんだ。
苦労や、焦りや、困難は、不幸なことじゃない って。
人として、生きてるって実感できるなぁって」