ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐
翌朝。
昨日までとは打って変わり、窓の外は暗 かった。
わずかに朝日がさすものの、その光は頼 りない。
じきに雨が降り出しそうだ。
自室のベッドで気持ちよく眠っていた未 来を起こしたのは、目覚まし時計ではな く、食器の割れる音だった。
空中から落下したマグカップ。
床に散らばる破片。
こぼれたミルクティー。
「うるさいなぁ……」
起床時間までは、まだ余裕がある。
なのに眠りの邪魔をされて、未来はひど く腹を立てた。
彼女は低血圧である。
苛立ちついでに上半身を起こすと、銀の お盆を片手にしたエルクの姿が目に入っ た。
「ちょっと……!
人の部屋で何してんの!?」
「わりぃ。割っちゃった……」
気まずそうに謝るエルクの足元には、マ グカップの破片が散らばり、ミルク ティーの甘い匂いが漂っている。
「それ……! 私の……!」
未来は勢い良くベッドを抜け出し、ミル クティーに濡れた破片をひとつつまむ。
割れたマグカップは、未来の物だった。
しかも、ただのマグカップではない。
彼女が気に入っているキャラクターの、 限定販売商品。
最近クラスで流行っているし、女子中高 生の間で爆発的な人気があるので、 ショップでもすぐに完売してしまった。
未来は、クラスの誰よりも早くこれを入 手し、クラスの女子達にうらやましがら れていた。
流行り物なので、そのうち飽きる予感が しなくもなかった。
一方で、今の未来にとって、このマグ カップは、自分の存在価値を示す勲章 (くんしょう)でもあったのだ。