ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐
青乃臣の移動魔術で学校に忍び込んだ時 は見慣れぬ校舎内の雰囲気にテンション 高く舞い上がっていたエルクも、今は憂 鬱そうな表情をしている。
空き教室中央の机にドッカリ座り、エル クはため息をついた。
「どっちがホントの未来なんだ?分かん ねぇ……。ますます混乱してきた。
こんな気持ちになるんなら、学校になん か来なきゃ良かったぜ……」
「エルク様は、裏表のない正直な方です からね。
未来様の言動を見て、そう思ってしまう のも無理はありません」
エルクの心情を理解しつつも、青乃臣は たいして驚いておらず穏やかだった。
「ジョー……。お前は、未来のあんな姿 見ても、全然驚かないんだな」
「ええ。予想はできていましたから。
日本人の若者に関するデータを調べまし たところ、未来様のようなタイプは、近 年増加傾向にあるそうです。
未来様は、ああいう方なのでしょう」
「『ああいう』って、家では不機嫌、学 校では人気者ってことか?
なんであんな風に、しゃべる相手によっ てコロコロ態度変えてんだ?謎過ぎ る……。
日本人って、そんなやつばっかなの?」
エルクは難しい顔をして、固く腕を組ん だ。
「……未来様は、私達に対し強い言動を 取ってみえますが、それは、精神的弱さ の裏返しなのです。
一見、気が強く何にも屈しない女性に見 えますが、彼女は非常に繊細で、傷つき やすい心の持ち主なのでしょう。
本音で人と接することができない……。
本当の自分をさらけ出して、クラスメイ ト達に嫌われるのを恐れているのでしょ うね」
「そうかあ……?
人に嫌われるのを恐れるようなヤツじゃ ないだろ、未来は」