ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐
家に帰ると、洋菓子のような甘い匂いが 漂っていた。
それだけではない。
いつもは静かな屋内に、人の気配があ る。
玄関にある二足の靴を見て、未来はげん なりした。
“そうだった……。
変な居候が2人も来たんだ……”
認めたくはなかったが、未来から見て、 異世界人と名乗る少年達はかっこいい顔 をしていると思った。
エルクは口が悪く、未来にとって気にく わない言動ばかり取るが、王子を名乗る だけあって、端正な顔をしていた。
青乃臣はいつでも落ち着いており、大人 びた雰囲気の中に、男性独特の色気があ る。
もし、クラスの女子が2人を見たら、彼 らは間違いなくモテるだろう。
けれど、両者とも、身元が怪し過ぎる人 物。
“私は、あんな妙なヤツらとは仲良くす る気なんてないからっ。
顔が良いだけの人間なんて、珍しくもな い!”
自分にそう言い聞かせ、未来は靴を脱 ぐ。
制服のままリビングに行くと、青乃臣が 彼女を迎えた。
「未来様、おかえりなさいませ。
お出迎えもせず、大変失礼しました」
おやつの準備をしていたらしく、白い シャツに、腰から下だけ黒いエプロンを つけた格好で、青乃臣は深々と頭を下げ た。
甘い匂いの正体を理解しつつ、
「出迎えなんていらないから。
余計なことしないで、アンタは掃除と料 理だけやってればいい」
冷たく言い放ち、未来はソファーに座 る。
「お疲れさまでした。
すぐにお茶をお淹(い)れいたします」
未来の言葉に腹を立てたり動じることも なく、青乃臣は丁寧に頭を下げ、ダイニ ングに引っ込む。