ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐
彼の気配がダイニングの奥に消えたのを 感じつつ、未来は周囲を見渡した。
今朝、盛大にマグカップを割ってくれた 少年の姿がない。
“アイツのことだから、うるさく絡んで くると思ったのに”
未来の予想に反して、エルクはやって来 そうになかった。
「お待たせいたしました」
青乃臣が盆を手に、リビングまで戻って きた。
未来の座るソファーの前。
さきほどエルクがマグカップを並べてい たガラス製テーブルの上に、青乃臣は手 作りドーナツ入りのバスケットと、あた たかいマグカップを置いた。
未来は、湯気を立てるマグカップの中の 紅茶を物珍しそうに見て、
「こんなの、あった?」
「そちらのマグカップは、今日、エルク 様が購入された物でございます」
「アンタ達、この世界のお金持ってん の?」
「はい。先日、微力ながら稔さまの書店 で働かせていただき、金銭をいただきま した。
マグカップは、今朝のお詫びです。
エルク様がご自分の手で未来様にお渡し したかったそうですが、今、エルク様は 自室にいらっしゃいますので……。
私からも、重ねてお詫び申し上げます。
未来様が大切にしている物を壊してしま い、本当に申し訳ありませんでした」
昨日と変わらぬ、冷静な物言い。
しかし、青乃臣はどこか元気がない。