ソウルメイト ‐臨時ヴァンパイアの異世界探索‐

思い返してみれば、未来はこれまで、ほ とんど手作りの食事を食べたことがな い。

昔はよく、稔の家で肉じゃがやひじきの 煮物などを食べていたが、最近ではそう いった機会もなかった。

昨夜は、一方的な祖父のワガママに怒り 心頭で、青乃臣が作った夕食の味もよく 分からなかった。


「お口に合いませんでしたか……?」

青乃臣は不安げに未来の顔をのぞく。

「これ、アンタが作ったんだよね?

アムド城ってトコから来たんだっけ?

そこから、何か特別な調味料とか持って きてんの?」

「いえ……。材料は全て、ダイニングに あるものを使用させていただきました」

「そう……」

それきり黙り込み、未来は用意された ドーナツを全て平らげた。

紅茶を飲み干すと、様子をうかがう青乃 臣を横目に、彼女は勢いよく立ち上がっ た。

「エルクの部屋に案内して」

「はい……! こちらでございます!」

青乃臣は未来の前に出て、彼女を案内し た。


たくさんある屋敷の空き部屋。

エルクの選んだ部屋は、偶然にも未来の 部屋の隣にあった。
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